建築家

松島潤平

introducing the new clean GROHE
meets

GROHE SENSIA ARENA

建築家・松島潤平、世界最高峰のトイレと出会う。ーGROHE SENSIA ARENA

ヨーロッパ的洗練さと精緻なテクノロジーを併せ持つ、ドイツ生まれの水栓ブランド、GROHE(グローエ)。
そのGROHEから発表された、センシア アリーナ(SENSIA ARENA)が話題を集めている。
日本が世界に誇る最先端のシャワートイレ技術とGROHEのデザイン性を融合させたこのイノベーティブなプロダクトと気鋭の建築デザイナー、松島潤平氏が出会った。独特の視点から造形を紡いでいく術を生業とする松島氏は、その視線の先にあるセンシア アリーナをどう見たのか?

建築デザイナーとしての、トイレという空間への取り組み方

「トイレという場所はこうあるべき」というのは特にありません。むしろリアクション芸人みたいに物件ごとに出てくる与条件に対して固有のアイデアを返すというスタンスです。そういう意味ではトイレ空間ってバリエーションが多くて、楽しみながら設計するような感覚はありますね。僕というよりもクライアントのコダワリが強いことが多いので、それを積極的に取り入れる楽しみもある。

トイレ空間は非常にパーソナルなものですけど、自宅に呼ぶゲストも必ず使うので、住宅の中でも極めて他人の目を意識するパブリックな空間でもあるわけです。
その両局面の要素に応えるという意味でも建築家としては面白い素材です。
また、他の空間は例えばリビングだったら「ここはこう拘って・・・」とプレゼンテーションできますけど、トイレの意図をゲストにじっくり語ることもなかなかないので、空間自体がメディアとして存在することになる。施主さんの意識も自然と見えるし、ゲストも必然的にいろんなことを受け取ってしまうわけだから、本当に空間がモノを言う場所だな、と改めて思いますね。閉じた空間の中でじっとしているのでそこで色々観察する時間が出来るわけですし、いろんな所作のなかでトイレから受け取る情報は考えているよりも膨大なんですね。

男子立小用時には水面に貼った泡が飛び跳ねを防止し、清潔さを保つ。そして内部のLEDのほのかな光により、夜間にトイレの照明をつけて眩しい思いをしなくてもよいという心遣いがある。

具体的な設計の話としては、トイレ空間は面積が狭いので、大面積の部分には使えない遊びのアイデアが使えるところなんですね。タイルとかもちょっとキャラクタの強いものを選んだり、ミニマルなデザインをされる方でもトイレではヴィヴィッドな差し色を使ったりしているのをよく拝見します。そういう意味では、非常にクリエイティブな実験の場と言っていいのかもしれません。
人がある時間を過ごす空間としては一番小さいぶん、非常に高密度で饒舌(じょうぜつ)な小宇宙といった感じですね。

センシア アリーナとの対面

まず堂々と出迎えてくれるイメージを感じましたね。むしろこちらが見られているぐらいの(笑)。排泄という行為の時にこれぐらいの存在感があると振る舞いも変わってきて、色々とセンシティブに動くようになるんじゃないでしょうか。例えば手洗い一つとっても綺麗に使うとか、そういう風に使う側の意識や行動を変えてくれる、そんなプロダクトは本当に稀ですね。「用」の美として生まれたものが、こちらの「用」までをも美しくしてくれるなんてすごいことです。

というか元々トイレってそういう存在なのかもしれないってセンシア アリーナを見て思いましたね。野原や街中で好き勝手に排泄していた世界から、衛生的な環境を生むために、つまり人間の衛生的で美しい行動を作るためにトイレは生まれたわけで。公共のトイレを、頑張ってイニシャルコストを掛けて一つ一つこういったクオリティの高いものにするだけで、清掃などのランニングコストは随分と良くなるんじゃないですかね。それが一つあるだけで大多数の振る舞いが丸ごと変わってしまう。センシア アリーナにはそこまでの強いポテンシャルを感じます。

素材と質感、デザインが整然一体となった圧倒的な存在感

まずテクスチャーが丁寧に一体としてデザインされているのが一目で理解できます。ユリア樹脂製カバーの光沢が品良く控えめに抑えられていて、陶器のぬめり感と非常にマッチしています。今までのモノの多くはカバーだけ違ったテカリ方に見えるのが不満だった。やっぱり陶器の肌感とは全然違うのでパーツとして分離して見えちゃうんですよ。でもこのセンシア アリーナにはカバーと本体の見事な統一性を感じます。

パーツが複雑に見えたり、要素が多くなってくるとトータルデザインが非常に難しくなるのですが、これはもう一つの完成された存在として鎮座してくれるので、トイレ空間をニュートラルにも作れるし、さっき言ったように遊び心を加えて色々やっても、全部を引き締めてくれる。何をしても空間のデザインクオリティが担保される感じはありますね。そういう意味では設計者として非常に使いやすい、有り難いデザインですね。

デザイナーとして共鳴できる”手数の多いミニマル・デザイン”

便器って今まで排水のところがセットバックして床に向かってギュッと絞られたフォルムが多かったのが、これはストーンとまっすぐラインが床に落ちている。現代のデザインは、基本的に重いものを軽く見せる傾向にありますが、陶器の存在感を活かしたブレない強さや重みが感じられるフォルムです。

それでいて台座を少し浮かせているというのがポイントですね。軽くはないけど、重鈍にも見えないような、こまやかなデザインの配慮を感じます。確かにミニマルなデザインなんですけど、決して思考を放棄したようなミニマルではない。見掛けの線数が少ないということは、逆に手間は多く掛かってるんですよ。ミニマルデザインというのは本来見えてしまう線を設計段階で執拗に消しているので、もの凄く手数が多くなるわけです。しっかり練って設計されているのがよく分かりますね。

台座の部分も高台みたいに見えて、スケールは違えど茶器のような佇まいを感じますね。「便器って陶器だったんだ」と、改めて気付かされますよね。陶器って人類にとって極めて初源的な物なんですよ。考古学において、文字発明以前の文明を解読するには陶磁器こそが最も重要なメディアだという話もあります。つまり人類が「ヒト」になったそのときからずっと寄り添ってきた本当に付き合いの長い存在なんですよね。そういう意味では陶器に対する人間の情報の受信力は非常に高いと思います。センシア アリーナは、そんな人間が感じる陶器への根源的な魅力を、肌レベルで改めて示してくれています。浴槽にしてもシンクにしても水まわりのモノって最近さっぱりしたライトなモノが増えてきたと思うんですけど、その中だからこそこの陶器の重量感は特別ですよね。ドッシリしたデザインや、この独特のテクスチャーを日常の中でたくさん触れることができるのは、非常にリッチなことだと思えますね。

陶器の持つ美しさを再構築する”原点回帰”

第一印象で見た時に、僕は中国の有名な磁器である「景徳鎮」をふと思い浮かべたんですよ。陶磁器ならではの艶かしさとか色気、存在感が重なるのかもしれないですね。そういえば西洋の陶磁器は、景徳鎮へのコンプレックスで出来ているという話がありまして。あの白い半透明の磁器って、西洋では長い間どうしても作れなかったんですよ。景徳鎮は11世紀に発明されたものですが、七百年後の18世紀にドイツで錬金術師によってマイセンが発明されて、ようやくヨーロッパで生産できるようになったわけです。で、ヨーロッパで独自発酵したものたちがまたアジアに帰ってきているという文脈なんです。

そういえばグローエもドイツですけど、景徳鎮に感じる陶磁器の色気が、七百年分の憧れをもって徹底的にアチラで研究されて、一周廻って戻ってくる、そんな大きな流れというか、歴史的な文脈が感じられるのが好きですね。ただ最先端なだけではない、人間に最も古くから寄り添ってきた人工物としての陶器の肌感を湛えている、というのが特に素敵です。変な話ですけど、食器も多くは陶器ですから、陶器というのは常々人間の肌が安心して直接触れることのできるものなんですよね。「身体という有機物から一番近い距離にある無機物」だと再認識しました。このセンシア アリーナにはそういった単なる便器を超えた、陶器というもののコンテクストとマテリアリティの根源的な部分にまで触れられるような、特別な魅力を感じています。

松島潤平

1979年 長野県生まれ。2003年、東京工業大学工学部建築学科を卒業し2005年東京工業大学大学院修士課程修了。2005年から2011年にかけては有名建築家・隈研吾氏率いる隈研吾建築都市設計事務所に勤務。そして2011年に独立し「松島潤平建築設計事務所」を設立した。
主な作品は QILIN(住宅・2013年)、MORPHO(オフィス・2013年)、LE MISTRAL(店舗・2014年)、育良保育園(保育園・2014年)、TEXT(住宅・2015年)TRITON(住宅・2015年)など。2015年度グッドデザイン賞、ベスト・オブ・ハウズ2016、2016年日本建築学会作品選集新人賞受賞。建築デザインに加え、様々なメディアに批評を執筆するなど、アートやカルチャーにも精通する今注目の建築家だ。

© 2016 GROHE Japan Limited

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